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ココロ

Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)


しんにょうの点 1つか2つか問題
辻林美穂

こんにちは( ◠‿◠ ) 私の名前は辻林美穂です。よろしくお願いいたします。

早速今回の議題に入ろうと思うのですが、「辻」の点の数がずっと気になっていました。
自分の記憶では、小学校高学年のタイミングでいきなり点が2つに増えた気がするのですが、当時は「2つのほうがおしゃれってことになったのかなぁ?」ぐらいにしか思っていませんでした。

そこから大人になり、手書きで文字を書くときには当たり前のように点1つ、スマホやPCで入力するときには当たり前のように点2つ、という生活を送ってきました。時々、契約書のやりとりをする際に「辻林様の辻の点は1つでしょうか、2つでしょうか」と聞かれることがあります。住民票、運転免許証、保険証といった身分証の「辻」は決まって点1つです。そのため、「本来は点1つなのですが、フォントによっては点2つしか出ないものもあると思いますので、どちらでも構いません」と答えるようにしています。

Twitterのプロフィール文で面白い事を書きたかったけど思い浮かばず、現在しんにょうのことを書いています。

photo01

しかし、ある日突然、点がなぜ増えたのか気になり出したのです。
だって、1つでいいじゃないですか。それに、点の数によって漢字の画数も変わっちゃうし。
逆に世間はどうして騒がずにいられるのか。腹が立ってきました。
本当にそれでいいのか!おい!!俺は!怒っている!!!!

というわけで、調べました。
なんのために点を増やしたのか。

まずは京都の印鑑屋さん 京都インバン の記事を読んでみました。
そこにはなんと「辻の点はもともと2つだった」と書いてあるのです。これまで「点1つを2つに増やされてなんやねん」と思っていたのに、オリジナルは2つのほうだったのです。なんかすみませんでした。

…だったら!!どうして!!!点の数を減らしたんだ!!!

一度怒ってしまったからには、怒り続けます。
そして調べてみました。

※ちなみに、しんにょうの点が1つから2つに変更されたのはJIS2004(2004年改訂)です。
それを先に言っておきます。

すごくざっくり話すと、

  • 戦前から、漢字は数も多いし複雑で学習するのが難しいから簡単に(略字化)すべきだ!という声が挙がっていた(wikiの当用漢字の概説)
  • 戦後最初に生まれた漢字のJIS規格(1978)は、JIS2004に近いものだった
  • 1983年の改訂(JIS83)によって、略字風の字体へ大きく舵を切られたが、当時はPCの普及も低くオンライン化も進んでいなかったので、あまり騒がれなかった
  • JIS90(1990年)に、戦後日常的に使われていた略字化のルールを、馴染みのない漢字にも強引に適用してしまった(例: 飴の左側を「飲」の左側と同じにする)
  • 略字化しすぎちゃったからJIS2004で調整(例: JIS90で葛の中身がヒだったのをLと人に戻した)

という流れがあります。(fontnaviさん の記事がとても参考になりました)

「辻」もまさに、JIS83,90で略字化の対象になり、点1つとされていたのでした。
それで、JIS2004でやっぱり点2つに戻ったというわけです。

なるほど。わかりました。
これで私も元の穏やかな生活に戻れm…
ってオイ!!!辻はわかったけど!!!
じゃあ「溺」とか「蔑」とか、「とめはらい」とか「横線」を手書きで書く時どっちで書いたらいいんだ!!!
「嘲」とかも月の中身が点々になっちゃってるじゃん!!!

私は怒っています。
色々あったのは分かったけど、じゃあどれが正解なんだい?と。

その答えがここに書いてあります。

文化庁 ”常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について”
第1章 2 “字体についての説明”(P7〜)

(前略)文字の骨組みを「字体」 と言う。
(中略)字体は骨組みであるから,それが実際に印刷されたり,手で書かれたりする場合は,活字独特の装飾的デザインや,人それぞれの書き方の癖や筆勢などで肉付けされた形で表れる。したがって,ある一つの字体が印刷されたり書かれたりして具体的に出現する文字の形は一定ではなく,同じ文字として認識される範囲で,無数の形状を持ち得ると言える。仮に,文字の形の整い方が十分でなく,丁寧に書かれていない場合にも,また,美しさに欠け稚拙に書かれている場合にも,その文字が備えておくべき骨組みを過不足なく持っていると読み取れるように書かれていれば,それを誤った文字であると判断することはできない。 翻って言えば,「字体」とは,同じ文字として様々に肉付けされた数多い個別の文字の形状それぞれから抽出される共通した特徴であり,文字の具体的な形状を背後で支えている抽象的な概念と言うこともできる。字体は,文字を見分け判別する際の基準,文字として社会的に通用するかどうかの基準として,社会全体で共有されることが必要なものである。

つまり何を言っているかというと、
「その漢字だと伝われば、手書き文字も印刷文字も、どんな書き方だっていいよ!」ってことです。「豹」の右側の横線を「、」と書いても、「鯖」の右側を「青」と書いても、伝わればオールオッケーなんです。

そっか(^0^)良かったー!!!!
考えすぎだったか。もう気にしないで生きていこう。

…しかし問題はここからなのです。
今まさに漢字を勉強している子供は、どうやって勉強したらいいの?
私には子供はいませんが、いつか友人の子供に漢字を教えてと言われたら、いつの時代の、どのフォントの漢字をもとに教えたら良いんでしょうか?
もう怒りは収まっていますが…ォィ!ぐらいの声は出しておきます。

調べました。
小学校では、学習指導要領 ”学年別漢字配当表” に示された字形を標準として、漢字運用の土台が作られています。いわゆる「教科書体」というものです。 さきほど引用した 文化庁の資料P11 に、学習指導要領について書いてあります。私が小学校で教わったのと同じテンションで、今の子供たちも学んでいるとわかりました!フゥー。安心した。

ですが、こんな簡単に事が済むわけないんです。

Twitterで、「子供の漢字テスト、バツをもらってきたんだけどこれって合ってますよね…?」という、親であろう人のツイートがバズってTLに流れてくることがありました。それをみていた当時は「先生厳しすぎるな」と思っていましたが、今回色々調べてみて、先生は「教科書体」に沿って教え、そこから外れた書き方をした児童にはバツをつけていたことがわかります。
ここは教育の場。先生がしていることが正しい。

となれば良かったのですが、資料P12 以降、やたらと「柔軟な評価を」と出てくるのです。
これは先ほど書いた「伝わればオールオッケー」と通ずるところでもあるのですが、「児童、生徒が指導した字形以外の字形で書いても、指導や場面の状況を踏まえつつ」「柔軟な評価」をしろと書いてあります。

結局、「教科書体」をもとに児童に教えて、漢字テストをしても、「教科書体」とは違う書き方をした児童にバツをつけたあとに「これって合ってますよね」と親から抗議が来てしまったら、「いやこれは教科書体で書くテストなんで」と言い切れず、”柔軟な評価”をしなければならないのです。
学校の先生めちゃくちゃ大変じゃないか…?

Twitterでは「子供が漢字を覚えることってすごく大変なことなのに、いろんな書き方があるよと言われてしまったらますます困惑しちゃうよ。だから教科書体に統一すべきだ。」とつぶやいている人がいて、私もこれに賛成です。

国が結構やわらかい回答をしてしまっているから、振り回される先生方はたくさんいるんだろうなって思います。まぁでも最終的にはそれぞれの学校のルールで採点してそうだな。

しんにょうの点の数から、話があっちゃこっちゃ散らかってしまいましたが、まとめると「伝わればいいけど、教えるときは教科書体にしておこう。でも採点について強く抗議されたらあとは知らん」です。勉強になったね!!

このコラムの冒頭に貼った 京都インバンさん の記事のラストに書いてあったのですが、「苗字では辻の点の数は区別されるけど、名前には点2つのほうしか使っちゃいけない」とあります。
私が「つじばやし つじ」という名前に改名するとしたら

photo02

となります。やっぱりキレた!!!なんでだよ!!!!!!!
(この私のモヤモヤを代弁してくれる 素晴らしいブログ があります。)

以上です。さようなら!!!!!!!


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