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Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)


手元に残しておきたい機材③ ~ROLAND RE-201 Space Echo
クニ杉本

このシリーズ3回目。制作環境がほぼソフトウエアに置き換わっても手放すことなく、手元に残っている機材を紹介します。
今回は先日亡くなってしまったLee "Scratch" Perryへの追悼の意も込めて、ROLAND RE-201 Space Echoです。

ROLAND RE-201 Space Echoは、1974年に発売されたテープエコー。
テープエコーは、入力された音を一旦テープに録音した後に再生することでエコー効果を生み出すものですが、機種により個性が様々です。RE-201の上位機種RE-501は、高音質化のためノイズリダクション回路を搭載しており、エコーの音がクリアなのですが、この場合はローファイなRE-201の方に魅力を感じます。ディレイタイムを変えるために再生ヘッドの位置を動かせるMaestro Echoplexは、使用中に再生ヘッドを移動することで強烈なエフェクトを得ることができ、わざわざレンタルして使用したことがあります。RE-201には入力した音でバネを揺らすことにより、リバーブ効果を生み出す、スプリングリバーブが内蔵されていることも特徴的です。
過去にはROLAND RE-150やWatkins Copicatなどのテープエコーや、単体のスプリングリバーブも数台所有していましたが、すでに手放していて、現在手元に残っているのは2000年代中頃に入手したこのいただき物のRE-201だけです。

YMOに出会い、夢中になっていた12歳の頃、父親とのとある約束を果たし、念願のシンセサイザーを買ってもらえることになりました。そしてちょうど同じ頃、自宅から徒歩5分ぐらいの場所に小さな楽器屋が開店することになり、父親が仕事でその店舗の施工に関わっていたため、まだ開店前だった 平野楽器ロッキン にお願いして購入することになりました。店長の平野さんが自宅まで届けに来てくれた日のことは忘れることができません。
その後、ロッキンが実際にオープンすると、とにかく毎日のように入り浸っていました。ジミヘンやジェフ・ベックなど、70's Rockを中心とした音楽が流れる店内に集う常連客を大別すると、①長髪で、ウエスタンシャツ、ブーツカット、ウエスタンブーツを合わせたロック系、②高校〜大学生で、バンダナを巻いてALFEEや長渕などを語るフォーク系、③主に社会人で、テクニック志向が強く、楽器にもお金をかけているフュージョン系、の3パターンに分かれていた気がします。当時YMOしか知らない自分にはどのみち全く未知の世界でしたが、様々な常連客と仲良くなって音楽の話を聞いたり、バンドで練習しているスタジオに入り込んで見学させてもらったりしました。またシンセサイザーやリズムボックスなどの最新機材も、まるで我が物のように自由に音を出してみることができました。思い返してみると、ロッキンは、自分の音楽の原体験の一つと言える、本当に大きな存在でした。
その後、東京の高校に進学するため地元を離れることになりましたが、帰郷するとロッキンには顔を出し、今でも平野さんとはよくお話しさせていただきますが、何かでスペースエコーの話になった時に、「当時買ってそのまま押し入れにしまってある。欲しいならあげる。」と言われ、お金を受け取ってもらえず、いただくことになってしまいました。
平野さんありがとうございます。そしてロッキン創立40周年おめでとうございます。

このRE-201は、ライブにレコーディングにと多用しましたが、特に思い出深いのは 前回のコラム でも触れている「TYCOON TO$H AND KUNI SUGIMOTO」名義の「LET IT DUB」というダブをテーマにしたアルバムです。中西俊夫氏によるライナーノーツに「デッドストックのスペースエコー」と記されているのはこの個体のことで、実際にアルバムを通して全面的に使用しています。このアルバムは中西宅にて、偶然性的とも言えるその時々の思い付きのようなものを最重要視しながら、無計画的に宅録したものですが、このアルバムのダブは、楽器にしても歌にしてもRE-201に直接繋いで、テープスピードやフィードバックをぐにゃぐにゃ操作しながら付け録りしてしまっています。あとでやり直しができるように別トラックで録っておく、みたいな発想が全くないのがトシちゃんらしかったなあと思います。

ライブでの思い出としては、岸眞衣子さん の「Kirie」というアルバムをプロデュースさせていただき、同じ時期に行ったツアーでは、水を張ったワイングラスを擦って音を出すグラスハープにエコーをかけるため、RE-201を使いました。

いただいた時には、録音/再生ヘッドのクリーニングキットなどの付属品までそのまま残っていて、本当に新品同様だったRE-201も、今ではすっかり普通の中古になってしまいました。名機として名高いRE-201は、当然のようにソフトウエアでも再現されており、わざわざ実機を使うことは少なくなってしまっていますが、やはり手放すことはできません。

興味を持っていただいた方に

イギリスの新聞「The Guardian」によるLee "Scratch" Perry追悼写真集ページ。
70年代に撮影された彼のスタジオBlack Ark Studioの写真で、卓の奥のすぐ手が届くところにRE-201が設置されていることがわかります。

イギリスの新聞「The Guardian」の選ぶLee "Scratch" Perry Best10。

RE-201の使用例。


記事一覧
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