Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
いよいよ今週末、7月12日(土)21時から、櫻井翔さん主演の占拠シリーズ第3弾、『放送局占拠』がスタートします!
今回も、敵・武装集団「妖(あやかし)」のテーマ曲をはじめ、新しい劇伴を多数作曲しています。まだオンエア前なので音楽の内容について詳しいことはお話しできませんが、今回も「おっ!」と思っていただけるような、面白い“変化球”が投げられているのではないかと自負しております。ぜひ、オンエアを楽しみにしていてくださいね。
『放送局占拠』は、前2作『大病院占拠』『新空港占拠』の続編という位置づけではありますが、過去作をご覧になっていない方でも十分にお楽しみいただける作品です。「前作を見てないから…」と敬遠されずに、是非一緒にリアタイで観戦しましょう!
そして、前2作をしっかり履修済みという強火ファンの方で、もしHuluに加入されている方がいらっしゃいましたら世界観を共有している『潜入兄妹』もご覧いただくことをお勧めします。そうすれば、さらにさらに『放送局占拠』を深く楽しめる…かもしれませんよ?
今年の夏は本邦ホラー映画が熱い!…ということですが私も8/8公開の『近畿地方のある場所について(白石晃士監督)』の劇伴を重盛康平氏と共同で担当するなどその一翼を担わせて頂いております。
映画は既に完成し公開を待つばかり。こちらもまだ詳細をお話しできないのですが一つだけお伝えするなら、プレビューを観ながら怖くて「家に帰りたい」と本気で思った…ってこと。配信を待って自宅で、とかスマホで…とかではなく”映画館”でご覧になることを強く強くお勧めします!音響でゾクッとすること間違いなしです。
ちなみに、これまでたくさんのホラー映画の劇伴を作ってきましたが、真夜中に怖い音楽を作っていて怖い思いをしたことが一度もないんです。むしろ嬉々として作っているというか、霊感が全くないというか…。自分には絶対に見えないという自信があるんですよね。
ただ、昔、何の劇伴だったかは忘れてしまいましたが、怖い音楽を作っている時に、ヘッドフォンから入れたはずのない音が聞こえたことが一度だけありました。知らない男の息遣いと、カタ…カタッという物音が断続的に聞こえて、「いよいよ来たか?!」とワクワクしたんですが、オチはマイクがオンになっていて、自分の息遣いと鍵盤を叩く音がマイクに拾われていただけ、というものでした。がっかり。
また、昨年末に引っ越しをしたのですが、新居のマンションでは夜中になるとパキッ、パキッとラップ音が毎晩のように鳴り響くんです。そこでまた「いよいよ来たか!」ですよ。ワクワクしながらChat GPTに「これはさすがに心霊現象だよね?」と尋ねてみたところ、「温度変化による建材の伸縮・膨張によるものです」と冷静に返されて、またしてもがっかり…。まさに「幽霊の正体見たり枯れ尾花」とはこのことですね。
さて、この令和ホラー映画の隆盛の背景には、ネット発のホラーコンテンツの充実があるな~って感じます。
特にYouTubeでは、「廃墟をめぐってみた」とか「事故物件に住んでみた」みたいなチャンネルがほんとにたくさんありますよね。個人がスマホひとつで気軽に“心霊現象”を撮って発信できるようになったっていうのもあるし、視聴者側もそういうのをエンタメとして楽しむ土壌ができてる気がします。
で、たまに海外の心霊動画なんかも観るんですが、あれはあれで面白い。ポルターガイストで家具がぶっ飛んだり、はっきり霊が映ったり、わりと現象が“激しい”んですよね。でも、それに比べると日本の心霊動画ってもっと静かというか、じわっとくる怖さ。気配だけとか、音だけとか、「何かいる…かも?」っていう曖昧さに長くとどまってる感じがします。
これって、単に演出の違いというよりも、日本人の死生観が反映されてるのかなって思うんです。死者=恐怖っていうだけじゃなくて、どこか親しみとか哀しさみたいなものが一緒にあるというか。「なんとなく一緒にいる」みたいな感覚って、日本独特なのかもしれないですよね。
ちなみに、私はさきほども述べた通り霊感ゼロの人間なので、心霊動画も「エンタメ」として観てます。自分が実際に体験したことがないので、そういうのを簡単に信じる気にはなれないんですよね。とはいえ、フィクションとしてちゃんと作り込まれてたり、チャンネル全体で統一された世界観があるとつい引き込まれてしまいます。
とりわけお気に入りだったのが「YamaQ」っていうチャンネル。事故物件に住んでる投稿者が自分の家で起きる怪異を記録していくんですけど、特に印象に残ってるのが「家の外から老人のうめき声がするのに、外に出ると止む」っていう現象。最近はすっかり現象の更新がなくなって寂しい限りなんだけど。
もちろん現象が本当かどうかはわかりません。でもこのチャンネルが面白いのはYamaQ氏がその現象の風土的背景を探ろうとするところなんですよ。近所の古墳群だったり、土地の成り立ちだったり、地元の歴史にまで踏み込んで考察していく姿勢があって、そこがすごく興味深いんです。
なんというか、YouTube版の“カジュアルな柳田國男or折口信夫”って感じ?怖い話で終わらせずに、ちゃんと土地や人の記憶にまで視点を広げてるのがいいなあって思います。
ホラーってただの恐怖じゃなくて「自分たちは何を怖れてるのか」をあぶり出すジャンルだと思うんですよね。そういう意味でもネットで広がってる令和のホラー文化、これからも少し距離を取りながら楽しんでいきたいなって思ってます。