トイロ

ココロ

Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)


影響を受けた作品
荒木尚美

長年、どうにもしっくり行かない会話があります。好きなミュージシャンに関して。
質問されて、色々並べても、何か腑に落ちない顔をされることがあります。今回も、また、誰も「なるほどね」と思わないかもしれませんが、長年忘れないほど衝撃を受けた作品について書きます。私の場合、人物に傾倒することはなく、作品単位であるということかもしれません。

まず、初めて買ったレコードは、フィンガー5の「恋のダイヤル6700」のシングル盤です。

発売日を調べると、1973年12月5日だそうで、確かに12月に買った記憶があります。
正確には、「買ってもらった」のではありますが。

私の両親は、私や弟を親戚や近所に預けて旅行に出かけることが多く、1973年の冬休み、私は一人、弟とは別で、母方の横浜の親戚の家に預けられました。私は1964年生まれなので、9歳。
祖母の妹が、横浜のデパートに連れて行ってくれて、
「商品券がいっぱいあるから何か買ってあげる。」
と言ってくれたので、私は舞い上がり、
「フィンガー5のレコードがいい!」
と迷わずレコード売り場に行き、買ってもらいました。多分、直前にテレビでフィンガー5を見て、夢中だったのだと思います。両親が、旅行から帰り、買ってもらった行為と買ってもらったレコードに対して、すごく怒った覚えがあり、
「こんな音楽は家のステレオでは聴かせないからな」
と、父のオーディオセットでは聴かせてくれなかったと記憶しています。今から思うと、フィンガー5以前に、父がモータウンをよく聴いていたので、ジャクソン5を明らかに意識したフィンガー5に9歳の女の子が飛びつくのは必然だったはずです。どういう流れか覚えていませんが、後々、自分専用のレコードプレーヤーと安い小さなスピーカーが二段ベッドの上段に置かれたので、誰かが買ってくれたのだと思います。そこから私の70年代の昭和歌謡漬けは始まり、当時は沢山あった歌謡番組にも夢中になりました。お年玉や小遣いは全部レコードに消えましたが、邦楽をなかなか認めない父は、あまり嬉しく思っていなかった様子でした。
今思うと、おかしな話ですね。音楽に国境はないです。モータウンもアイドル歌謡も私にとっては同じものでしたが、父は、戦後、アメリカに対する憧れを強く持ち、自分達の文化を恥じているような世代だったのでしょう。フィンガー5のアルバムには、モータウン曲のカバーが何曲も入っていて、父は、いつも、モータウンをかけながら、
「こっちが本物で、フィンガー5はこれの真似なんだ。」
と言っていました。

順序はフィンガー5が先なのか?全く覚えていないですが、衝撃を受けた声は、モータウンの大スター、ダイアナ・ロスです。特に、この曲でした。

I’m Gonna Make You Love Me(1968)

テンプテーションズの歌声が大変魅惑的で、うっとり聴いていると、2コーラス目で年齢不詳の中性的な声がいきなり入ってきます。まだダイアナ・ロスの性別や姿を何も知らない子供には、
「子供が突然大人の中で歌っている!」
と驚きでした。
その後も、ダイアナ・ロスのことは何もわからず、長い間、金髪の白人で10歳ぐらいと思い込んでいました。おかしなもので、マイケルやスティービーは明らかに黒人で子供とわかっていて聴いていたのに、なぜ、ダイアナだけそう思い込んでいたのか分かりません。
その後も、父がよく車で聴いていた曲では、

Ain’t No Mountain High Enough(1970)

「これを歌っているのは、日本で言うと小柳ルミ子みたいなレベルの歌手で金髪の女の人?」
と質問したことがあります。
「もっと上だ」
と父は答えていました。

ダイアナ・ロスは長く大スターとして活躍していますが、特に60年代から70年代前半の彼女はいつ見ても驚きの女性です。

The Temptations and Diana Ross & The Supremes "Hits Medley" on The Ed Sullivan Show

今見ても、テンプテーションズも含め、あまりにかっこ良過ぎて、細々音楽活動をしている自分が惨めになるぐらいです。

その後、シンガーとしてビックリさせられたのは、リンダ・ロンシュタットです。70年代、新譜情報は専らラジオで得ていたので、いつものようにラジオを聴いていて、いきなり『耳のすぐ横で聴こえる声』にフリーズしてしまったのを覚えています。

Blue Bayou(1977)

エレピが入ってくるまでは、調もよくわからないまま「自分の声を聴いている」的なおかしな気分にさせられます。

こんなにも熱い気持ちを語るのに、私の音楽には全くその影響が感じられないのだと思います。例えば、私の新譜「 1964 」(イチキューロクヨン)で、ダイアナやリンダからの影響が感じられるでしょうか?自分ではそう思いません。

衝撃を受けた声を色々思い出していて、ちょっと番外編ですが、すごくかっこいいMVです。

Johnny Come Home / Fine Young Cannibals(1985)

この時代になると、曲のヒットには映像が大きな位置を占めるようになるので、見た目のインパクトも相当手伝っています。

憧れの声の上位にはマーヴィン・ゲイも入っているのですが、彼の場合、映像がないほうが私は好みなので、音だけで。久々の新譜だった「セクシュアル・ヒーリング」はシングル盤を買いましたが、当時のPVは見なくてもいいと思います。音も含めて、賛否両論あった作品ですが、ボーカル自体の魅力としては本当にうっとりします。

Sexual Healing(1982)

ということで、歌い手として影響を受けたのは、ダイアナ・ロス、フィンガー5の晃、(ならばマイケル・ジャクソン?)、リンダ・ロンシュタット、マーヴィン・ゲイでしょうか。
「あー、似てるかも。なるほどね」
と言いたい人には、やはり腑に落ちないかもしれません。
できればもっと似たいものです。


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