トイロ

ココロ

Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)


手にした楽器や機材紹介と、その当時の記憶を辿る作業 その2
薄井由行
【アナログ・リズムマシン】《BOSS DR-55》

アナログ・シンセサイザーの次に所望したのがリズムマシンでした。当時発売されている機種の中では、価格が段違いに手頃だった(と思います) DR-55に決定です。安価ながらも、バスドラム・スネア・ハイハットにリムショットという構成。其の上にオリジナルのパターン(合計16パターン)をプログラムする事が出来ました。然しハイハットだけは例外でした。此のパートだけは単純に「チッチッチッチッ....」と等間隔で鳴るだけ。処がと在る雑誌の特集記事に、リムショット部分の回路を利用する事によって、ハイハットも他のパートと同様に、自由にリズムパターンが組む事が出来る。其の様な改造方法が掲載されていました。但し改造するとリムショットが一切使用不可能に成るとの事。だけれども失う事よりも得る事の方が多いという判断の下、半田ごてと暫し格闘した後、無事に改造が成功し「チッチッチッチッ....」の束縛から到頭開放されました。今はプラグインでアナログのサウンドが簡単に再現出来るので、様々な場面で活用しています。

【デジタル・シンセサイザー】《YAMAHA SY77》

高校に入学すると、最早電子音楽から興味が離れていました。興味の対象がアコースティックな楽器へと回帰していたからです。又音楽のジャンルも現代音楽へと移っていました。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 更に数年が経ち大学に通う事になって暫くした頃、学校に幾つかの電子楽器が導入されていました。その電子楽器の部屋を見学させて貰っていると、其の中に在ったと或るシンセサイザーに目が止まります。そのデジタル・シンセサイザーは、1曲丸ごと記録出来るシーケンサーが搭載されており、しかも8トラック仕様。つまり一台で8パートの演奏が可能でした。出てくる音は聞き慣れたアナログの音とは違い、生楽器の音がシミュレートされている。驚きました。ーーーーー 大学四年の或日、自主映画を撮影している古い友人から、未だ先の話ではあるがと前置きし。と或るコンペに参加するつもりだが、作品を新たに撮影しなければならないのだと。其処で其の作品の為の音楽を作ってくれないか。という話を持ち掛けられます。制作の流れを聞く限り、柔軟な対応が求められました。如何せん映像に音楽を付けるという経験が、当時は未だ殆ど無く、又、其の当時所有しているアナログ・シンセサイザーを軸とした、最小限の機材で取り掛かるのは甚だ心許ない。システム的にも音楽的にも困難に遭遇するであろうと感じた訳です。其の懸念を払拭してくれるであろう別の機材。つまり其れは制作途中でも細かい変更に対応出来る柔軟なシーケンサーと、アナログではなくアコースティック(風の)楽器音が出せるシンセサイザーである必要がありました。念頭にあったのは、大学で目にしたデジタル・シンセサイザーでした。最早露呈した展開ですが、要するに「アレ」を手に入れる建前が欲しかったという事です。鉄は熱いうちに打てと言わんばかりに、早速行動に出ます。アルバイトを掛け持ちし、親にプレゼンをして借金をし、何とか資金調達を達成。いざヤマハ​ミュージック東京 渋谷店へと向かいます。一階のフロアは、すっかりアナログの泥臭さから洗練されたデジタル(注:当時の感想です)へと様変わりしていました。当初は大学で目にしたKORG M1が唯一の候補でした。しかし現地で他のシンセサイザーにも触れてみると、候補が増えてしまったのです。それはYAMAHA SY77でした。音色的にはM1の方が押しが強く、SY77の方は少し繊細な印象を受けました。然し何方も捨て難い。だがSY77の液晶画面の大きさは、きっとシーケンサーおよび音色のエディットに大いに役立つであろう。而もトラック数はM1の倍の16トラック。又サンプル音源をFM音源のキャリアとして使用出来るという機能が(使いこなせるか否かは別として)、とても魅力的に思えたのです。SY77に決めました。SY77の価格はM1に比べて其れなりに高かったのですが、ヤマハの直営店だった事も有り、値引き率はM1よりも良かった気がします。然しそれでも足りない分はローンを(ドキドキしながら)組んだのを覚えています。ーーーーーーーー 撮影仕立ての編集前映像が順次送られて来て、慣れない「コレ」で試行錯誤しながら音楽を付けていきます。楽しい日々でした。其んな此んなで無事に作品は完成。処で少し脱線してしまいますが、その自主映画の為に作った私の拙い音楽が、其のコンペの審査員だった御一人から気に入られ、それが縁でと或るPVのBGMを任されます。お金を得た最初の仕事でした。その後、その曲をカセットテープに録音し携え、ゲーム系の会社の門を叩き、其処の音楽部門で作曲のアルバイトを始めます。暫くはそのゲーム会社に所属していました。或日同じ職場で働くA氏から、映像系の制作会社で働いている、彼の友人B氏を紹介されます。又其のB氏の同期であったCG部署に在籍していたC氏を、B氏が引き合せてくれました。そうして云々、それから彼云と時が流れ、今へと繋がっています。プロとしての出発点はYAMAHA SY77からでした。このシンセサイザーを手に入れた事が、私にとっての転換点。其れを今回書いていて、改めて思い出しました。因みに上述の映画は賞を獲得しました。

(つづく)


記事一覧
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2022.11.02 藤本功一 / カタールワールドカップアジア最終予選と川崎のバンディエラ
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2020.12.30 谷口尚久 / 2020年を振り返って
2020.12.30 Gak Sato / 2020年にリリースされたアルバムより
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2020.12.23 横川理彦 / 2020年は、これを聴いていた ベスト5