トイロ

ココロ

Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)


「カレー」
藤本功一

〆切の3時間前になっても書く内容が思いつかず、実際に一文字すら書いていない人間がどうしたらいいのかを考えている。より正確に言えば、どうしたらいいのかを考えながらそれをタイピングしている。思考とタイピングという物理的行為がほぼ同時に行われているので、たまに「対ぴpンぐ」みたいな打ち間違いをしちゃうのだけれど、それはそれでいい。誰しも間違いはあるし、人間の歴史は間違いの歴史と言っても過言ではないから。…いや、過言かもしれない。過言かもしれないけれど、しかし、それは今はどうだっていい。過言かどうかはどうでもいい。なにはともあれ、あと2時間47分後までに原稿を送らねばならないという現実が目の前にあり、その現実とどう向き合うのかが今のわたしにとって大事であるのだから、ぶっちゃけ、人間の歴史なんてどうでもいい。そもそも歴史の成績も良くなかったし、歴史にそこまで興味もないんですよ。…いや、興味がないは言いすぎたな、多少はあるかもしれないけど、ただ、今その興味を発動させることに意味はないという言い方のほうが正しいか。ん?ちょっと待って、正しいってなに?正しいってなんなんだろう、なにが正しいってことなんだろう?正しさなんて人それぞれだし、誰かにとって正しいことでも他の誰かにとっては正しくないわけだから、安易に「正しい」という言葉を使っちゃいけないんじゃないの?それが全ての間違いのもとなんじゃないの?…と、ここまで書いて「正しさってなに?」と問いながら「それが全ての間違いのもと」とか書いちゃってることに気がついた。正しさを定義する前に間違いを定義しちゃってるね、うわー、わたし本当にいい加減な人間だなあもう!こんなにいい加減な人間だから、〆切の2時間27分前にこうやってあたふたしながら原稿を書いているんじゃないの??……ん?待って待って、正しいも間違いも定義できていないのに、今わたし「いい加減」って書いちゃった?うわー、最悪だ、最悪の事態がおきた。もう全部だめだ、全部だめ。台無しだ。だって、カレーを定義できていない人間にカレーは作れないでしょう?カレーを定義できていない人間がカレーを作ることができますか?「どうぞ、カレーです」なんて言いながら自信満々の顔でシチューとか出しちゃうでしょ、そんな人間。いや、シチューも美味しいよ、なんならハヤシライスも美味しい。だけどそれはカレーじゃない。シチューやハヤシライスも美味しいけどそれはカレーじゃない。再確認です。シチューやハヤシライスも美味しいけどそれはカレーじゃない。今は目の前に出されたものがカレーかどうかが問題なのであって美味しいかどうかは問題じゃない。だから、美味しいシチューや美味しいハヤシライスが出されたとして、それを食べて「これ美味しい!最高!」と思っても、それはカレーじゃないから間違いです。最高だけど間違い。あっ、間違いってこういうこと?これが間違いってこと?じゃあ、正しいってなに?正しいってカレー?正しいってカレーのこと?うわーそっかあ、なるほどなあ、さすがインド人だなあ、仏教とゼロの概念を生み出した人たちは一味も二味も違う。それにm食わrべ手、あ、打ち間違えた、それに比べて極東の片隅で生きるくたびれたミュージシャンの思考及び発想の貧しいことよ。こんなことでうじうじとやっているから、〆切の2時間12分前になっても内容がなにもない原稿を延々と書き続けちゃったりするわけですよ。でもね、「それはそれでいいんじゃないか」とも思っている。むしろ、逆に「そうでありたい」と思っている自分が心のどこかにいることを否定できないし、そんな気持ちを大事にしたいと思っていることもまた事実だし、その事実を大事にしながらこの先も生きていきたいと思っているし、今までもそうやって生きてきたし、地元の仲間(ダチ)ってやっぱりいいなって思う。そんな今の正直な想いを歌にしました。それでは一曲聴いて下さい。『地元のダチ』。


♪~

[A]
馬鹿やってたあの頃
粋がってばかりだった自分
海が見たいだなんてうそぶいて
真夜中 単車(バイク)飛ばした

[B]
あいつがくれた言葉
強がりや弱音 全部本気だった

[C]
夢を頼りに走り抜ければ
未来があると信じていた
行き着いた先 それでも
大事な仲間はお前だけ
Best Friend...


……やべえやべえ、歌ってる場合じゃなかった。原稿を書かないといけないんだった。いや、ある意味ちゃんと書いてはいるんだけど、でも、実際のところどうですか、これって人様に見せられるような代物になってますかね。というかさ、人様・世間様ってねえ、最近みんな他人の目を気にしすぎなんじゃないのかなあ。もっと自由でいいんだと思う。あなたはあなただし、わたしはあなたがあなたであることを大切にして生きてほしいと思っているから。そんな今の正直な想いを歌にしました。それでは聴いて下さい。『いつものあなたが好きだから』。


♪~

[A]
窓辺でゆれるカーテンが
そっと頬をなでた午後
紅茶の香りに誘われて
やってくるのはきっとあなた


……まてまてまて、歌うんじゃない、ちゃんと原稿を書け。〆切まであと1時間21分しかないんだから、歌うのならちゃんと原稿を書いてからにして下さい。ん?ちょっと待って、原稿を書いたらわたし歌うの?ホントに?歌わなきゃダメ?そっかあ、じゃあ、何を歌おうかな、歌はあんまり得意じゃないんだけどなあ。でもさ、得意じゃないとはいえ、せっかくの人生なんだから、「歌うように生きていきたいな」とは思いますよね。歌うように暮らしていきたい。さて、そんなあなたに提案する安心プランがこちらです!どん!…と、生命保険のコピーみたいなことを言っておりますが、でも、完全な安心なんてありえないと思うんですよ。そんなの無理でしょ。完全な安心の達成が無理である以上、完全な安心という状態に一番近づくのは、不安につながる要素を出来るだけ気にしていない時、忘れている時なんですよね。儚いなあ、忘れることが安定につながるなんて人間はなんて儚いのだろうか。確かに今も〆切までの残り時間を忘れている時の方が明らかに気持ちが安定しているものな。あと、1時間05分。まあ、そんな儚い人生、だったらせめて歌でも歌って生きていかないとつらいっていうね。なるほど、歌うように生きていくとはそういうことか。ミュージシャンを長年やってきた今になっても気づくことがあるなんて、わたしもまだ伸びしろがあるな。よし、じゃあ、今日はこの原稿を書き終わったら歌う!歌うことにする!ヒトカラへ行く!そして、自分が作った曲を歌ってカラオケ印税をもらう!1円でも2円でもわたしは安心材料が欲しい!ただし、この場合ヒトカラにかかる料金は考えないものとします。物理のテストに出てくる空気抵抗や摩擦と同じ扱いとなりますので、この点についてご理解の程をお願いします。〆切まであと0時間41分。…ねえ、時間って本当に残酷。だけど、誰に対しても平等だし、嘘をつかないから好き。人は優しいけど、相手を選ぶし嘘をつくから。でも、わたし人を嫌いになんてなれない。わたしも人だから。そっか、みんなそうやって生きているのね…

すみません、次回はちゃんと書きたいと思います。


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