Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
AI Prionyx —「絵卑剛念さん!今日は何をお手伝いしますか?」
AI Prionyxはいつもの定型メッセージを表示する。
絵卑剛念は予め考えていたプロンプトを打った。
絵卑剛念 —「7月16日に関するエpソードをハルシネーション無しで、なんかいい感じの文章をテキトーに書いt。1500文字くらいで」
AI Prionyx —「わかりました、絵卑剛念さん。7月16日にまつわるエピソードについて、ハルシネーションを排除し、事実との整合性に十分配慮したうえで、適切な表現で1500字程度にまとめます。」
◎◉◎◉◎◉
AI Prionyxはしばらくのあいだ、生成中を示す「◎」と「◉」をディスプレイ上で交互に点滅させていた。そして、ゆるやかな速度で、まずタイトルが、ついで本文が生成されていった。
タイトル『いくつもの7月16日』
第一章『夏を色どるネイルの日』
時は1918年の『夏を色どるネイルの日』。ラマノフ家はオソロシア革命の炎に呑まれ、ラマノフ王朝の王であり、刑事でもあった、ニコラス二世の妻のパーティナ・フョードロドロは、貴婦人仲間と共に、夜な夜な三本足の怪僧RSPTNと、乱痴気パーティをしまくった挙げ句に、一転、家族もろとも静まり返った地下室で、銃声の音で死んだ。「労働者の国(嘘)」と「平等(嘘)」を掲げる新たな勢力により、王権神授説が砕け散る瞬間だった。
第二章 『駅弁記念日』
砕け散ったかつての王、ニコラス二世の骨片は、肉をずるりと引きはがしながら、時空の断層を彷徨い続けた。そして1945年の『駅弁記念日』、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区にあるニューメキシコ州の砂漠へとたどり着いた。そこにいたのが、ポッペンパイマーという名物物理学者である。ニコラス刑事の骨片は、ポッペンパイマーの頭を直撃した。因みに、ポッペンパイマーは、映画になるほど有名らしい。しかし理由は不明である。なぜなら、この名前では検索結果にヒットしなかったからである。話を戻すが、刑事の骨が頭に当たった反動で、ポッペンパイマーが技術スタッフを突き飛ばした。その勢いで、そのスタッフは、現地時間の午前5時29分45秒(日本時間では午後8時29分45秒)に勢い余って、爆弾の起爆スイッチを押してしまう。気まずくなったポッペンパイマーは、まるで逃げ出すかのように、どこかへ飛び去ってしまった。
第三章 『長瀞観光の日』
青い閃光を放ちながらポッペンパイマーは、時の狭間を越え、フロリパ州パナペラルから成層圏へ向けて、秒速約11.2kmの速度で飛び立ったのは、1969年の『長瀞観光の日』 、現地時間は午前9時32分(日本時間だと午後10時32分)。もしくは、ケネリース宇宙センターから打ち上げられた、ほぼほぼピンク色の『飛宝路(あぽろ)11号』***宇宙船がチョコレート製という主張には、ハルシネーションが含まれている可能性があります*** その船体の外に、海水パンツ姿のニヒル・アースストロングが現れ、『静かな海』と名づけられた海の家の前で、大阪発祥の石を拾っていた日の5日前️。
第四章 『外国人力士の日』
それから、なんやかんやあって無事に地球へと帰還した、ポッペンパイマー閃光は、30年後の1999年『外国人力士の日』に、一機の小型飛行機に激突した。その衝撃に、パイロットはかすかな声で「キャパい……」という、言葉なのか鳴き声なのかもわからない音声を最後に、通信は突如として途絶え、機体は空から忽然と姿を消した。原因はパイロットが空間識失調に落ち入り、機体の位置関係がうまくつかめず、制御不能な状況に陥ったとネットに書いてあった。この痛ましい事故が起きた小型機には、少なくとも一人が乗っていたとも噂される。その一人の名前はショーン・E・ケネリースJr.。ジュニアとあるので、多分ムスコの事だろう。同乗者は彼の妻と、妻の夫の義理の姉、即ち妻の姉であった。彼はケネフィー家の希望であり、政治的王朝の再興を担う存在として、人々の期待を一身に背負った存在だった。喪失の痛みは、言葉に尽くせぬほど深いものであったに違いない。だが彼の魂は、姿を変え、時を越え、いくつもの7月16日を駆け抜けながら、今もなお、どこかで息づいている。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
本文は、過去に読んだ筒井康隆、星新一、小松左京の各氏によるショートショート作品を記憶の糸をたどりながら執筆したものです。