Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
谷口尚久
そうだった、ここは音楽事務所のコラムコーナーだった。もっと音楽的なことを書いて良いのだった。忘れていた。
単純なものは子供っぽい。いや、反論はいくらでもあるだろうが、いったんそう考えると頭が整理される。
単純なメロディは覚えやすい。ファシソレミよりもドレミレドは覚えやすいし、子供に教えやすい。すぐにみんなで歌える。つまり、メロディとして「強い」。多くの人たちに浸透する力があり、時間を経ても長く残る力がある。
同じように、単純なコードも強い。ドミソは強い。ドファラも強い。でもドファソは落ち着かないし、ドミソシは複雑で不安定だ。
繰り返されるメロディやコード進行は、覚えるのが簡単であるという意味で単純だ。すぐに真似ができる。ライブ会場でのコール&レスポンスは、メロディを繰り返すから初めての人でも出来る。そういう「強い」手法だからこそ、ずっと昔から存在していて、きっと今後も残っていくのだろう。
ではリズムはどうか。
リズムは繰り返されるからこそリズムになる。タントントントンを繰り返せば4拍子、タントントンなら3拍子になる。
例えばタツチツタツチツというリズムがあったとする。頭の中でタツチツタツチツと唱えながら、ツの部分だけを口に出したらどうなるだろう。「ッツッツッツッツ」という感じだろうか。これが裏拍というやつだ。
実際にやってみてほしい。どれくらいの人がすんなり出来るのだろう。そんなに難しくはないと思うのだけど、言い切る自信はない。
そして、これは単純なリズムなのだろうか?それとも複雑なリズムなのだろうか?繰り返しなのだから単純とも言えるし、休符(=休み)を感じなければならない分、複雑とも言える。
つまり裏拍とは、単純でありながら複雑なのだ。簡単でありながら難しい。そして、だからこそ自分にはとても楽しい。
聴くのも楽しいし、演奏するのも楽しい。体を委ねると気持ちがいい。
特にギターが楽しい。ピックを持つ右手は上下に動かす。1・2・3・4と振り下ろすのに対して、裏拍は引き上げる瞬間だ。それを他の楽器と合わせるのが楽しい。
ここにスウィングというノリを加えてみよう。タツチツタツチツではなく「タッツ チッツ タッツ チッツ」だったらどうか。「ンッツ ンッツ ンッツ ンッツ」となる。これはより楽しい。
裏拍は単純であり複雑。複雑であり単純。
単純なことをやっているようで複雑で、複雑なことをやっているようで単純。だから楽しいのだ。
裏拍は子供っぽくもあり、大人っぽくもある。そして音楽を柔らかくしてくれる。
先日リリースした作品は、そんなことを考えながら作りました。そんなこと「も」考えながら作りました。よろしければどうぞ。