Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
ゲイリー芦屋
今年の夏は、なんかちいさくてかわいいやつのお祭り状態でしたねー。個人的にはちいかわ歴2年くらいかな?アニメ第1期の放送中になんとなく見始めたんだけど、最初は「どうせゆるくてかわいいキャラがもふもふしてるだけの、ヤマもオチもないやつでしょ」くらいに思ってたんですよ。ところがどっこい、あっという間に「これはただごとではない!」に変わり、いつしか最新話の更新を正座待機する人間になっておりました。
特装版の単行本を買い、ハチワレの「なんとかなれ!」お守りを買い、気づけば転がり落ちるように沼の底。ちいかわラーメン「豚」を予約して食べに行き、ちいかわレストランを予約して食べに行き、ちいかわベーカリーだけは費用対効果的に「ちょっといいかな…」と遠慮しつつも、原宿に行ったついでに店を外からそっと覗き、スタジオでは「なんとかなれ!」お守りを握りしめてレコーディングに臨み白い目で見られたり…。第1期が終わってお休みに入った時の絶望感たるや。「きっとこの休み中に映画を作ってるにちがいない!劇場版ちいかわ!熱い、熱すぎる!」と妄想して、なんとかロスを乗り越えようとしてたんですよ。それがまさか本当に映画が実現して、海外まで巻き込む大騒ぎになるとは!
というわけで今回は映画「ちいかわ 人魚の島のひみつ」大ヒットに寄せて積年のちいかわへの想いを綴ってみたいと思います。
最初に「あっ!」ってなったのはやっぱり「ほめられリボン」のエピソードかなあ。連続エピソードはどれも深くて好きだけど、ループもの愛好家としては「黒い流れ星」篇も忘れられません。ちなみに私、NHKの合唱コンクール=Nコンを観覧応募してNHKホールまで見に行くレベルの合唱好きでもありまして、「黒い流れ星」の「時の旅人」はエモすぎた!たまにちいかわが主人公だってこと忘れそうになるんだけど、「時の旅人」を聞きながらちいかわがループを断ち切る決意を持って走り出すシーンのエモさはまさに堂々たる主人公の面目躍如っぷり。映画にしろ「黒い流れ星」にしろちいかわが主人公らしい決断を下すシーンはやっぱり盛り上がりますな。好きなエピソードを挙げ出したらキリがないんだけど、ホラー的にこれだけは語っておきたい、というエピソードがありまして、それが第2期の「拾魔」篇なんです。
あれって鬼太郎第2期の輪入道回「ダイアモンド妖怪」ですよね?…というSNS投稿を見かけて「どれどれ」と配信で見てみたら、本当にまるっきりインスパイアされてて「おおっ!」ってなりました。しかも拾魔の蛇のモチーフがギリシャ神話のメデューサ由来というのも念が入っていて、単なる鬼太郎オマージュではなくダイアモンド妖怪の元ネタにまで踏み込んだ深みまで加わるという…なっ!。
この拾魔篇で特に感じたんだけど、主人公クラスのキャラがキメラ化したり石化したりして、「あーあ、もうだめじゃん」と読者を絶望させる展開、ずっと妙な懐かしさがあったんですよ。で、これって「水木しげるテイストなのでは?」と気づいた途端、全部合点がいったんですよね。そう思うとモモンガの立ち居振る舞いがねずみ男に見えてくる瞬間もある(笑)。いや、モモンガはルッキズムのメタファーなんでそこは本質的に違うものなんですけどね。キメラ化も、鬼太郎で言えば大海獣や吸血木を思い出しますしねえ。だからパラレル篇でハチワレがキメラ化したのを見たリアルキッズの絶望、めちゃくちゃ気持ちが分かるんですよ。だって自分も昔、鬼太郎や悪魔くんで同じ感情を受け止めてきたから。トラウマの継承、ここに極まれり。
あと、拾魔の「でっでーいーでーいーでー…」って歌あるじゃないですか。あれ、超人バロム・1のヤゴゲルゲの子守唄を思い出しませんか?(おれだけ?)。まあおそらくリファレンス元は「かごめかごめ」なんじゃないかとは思うんですが、こういう勝手な連想までしてしまうのは昭和オタクの悪い癖ですね。拾魔を退治して地中に埋めて一件落着、と思いきや、最後にあの歌が「まだ洗脳解けてないよ?」風に流れるのもホラー定石の展開で実にほっこりします。
歌といえば、悪夢篇のアクムの歌も最高でした。これはダンボの「ピンクの象の行進」とくまのプーさんの「ズオウとヒイタチ」の歌がリファレンスなんでしょう。どっちも悪夢で象が出てくる話だし、まさにこの二つを足して2で割ったような曲なんだけど延々と脳内ループする麻薬のような歌声とメロディーで、気がつくと動画をリピートしてるんですよね。
残酷で容赦のない話の連続、ナガノ先生がかまきりのメスがオスを捕食することに惹かれていらっしゃることなどからも今後の展開を考えるとそら恐ろしくもなります。でも、そういう世界の厳しさ、残酷さを子ども心に刷り込むちいかわは、新しい時代に生まれた新しい形のデビルマンなんじゃなかろうか、と。そんな殺伐として救いのない世界だからこそ、主役の三人にはいつまでも大切な友達のままでいてほしい。僕がちいかわを見続けたいのは、そんな儚い願いを三人に仮託してしまうからなんですよね。